人的資本経営が失敗する理由は多い
世界規模で取り組みが行われている人的資本経営は、人材をコストや資源と考えるのではなく、投資対象や資産と考えるといった考えに基づいています。
従来の経営手法と大きく異なる内容が多く、頭では理解していてもなかなか実践できない企業は少なくありません。
経営陣が人的資本経営を正しく理解した上で正しい方向性で制度化して進めなければ、せっかくの人的資本経営がもどきという名のもとに失敗制度となってしまう可能性もあります。
人的資本経営が失敗しやすい理由は、いくつかあります。
1つ目は、人材に対する戦略と経営に関する戦略が同期せずに文理してしまう戦略的分断が挙げられます。
現在の状況と目標とするべき状態のギャップを把握できないまま、企業経営が瞑想してしまうのです。
2つ目の理由は、やっているつもりになっているだけで実際には実践できていないというものがあります。
戦略の面では素晴らしいプランニングをしても、実際に実践できなければそれは絵に描いた餅です。
人的資本経営は企業にとってコストがかかります。
人的資本経営の戦略設計においては、そうしたコストを踏まえながらどの点からスタートするのか、そして具体的にどんな方法を制度化することから始めたらよいのかという点までじっくり検討する必要があるでしょう。
3つ目の理由は、計画倒れしてしまうというものです。
やる気はあっても具体的にどのように対処すればよいか分からずに実行できず、社内規定に記載されるだけで実態を伴わない人的資本経営は残念ながら少なくありません。
たとえば社内にAIシステムを導入するという計画を立てても、人材をどのように採用して育成するかという点まで具体的に設計しておかなければ、計画倒れの失敗に終わることでしょう。
対策はある?
人的資本経営がもどきで終わらないためには、企業の経営陣はいくつかの対策を講じる必要があります。
まず1つ目は、人材の戦略プランニングを設計したら、その内容を必ず経営戦略にも反映させることです。
人材戦略だけを立てても、それが経営戦略に反映されなければ実効性は低くなりますし、企業の価値アップにつながる可能性も低くなってしまいます。
経営戦略を見直して大きく方向転換することは、人材戦略と経営戦略が二人三脚で前進するために必要な作業です。
2つ目の対策方法は、時代が求める人的資本経営を模索するというものがあります。
変動し続ける社会のニーズの中では、時代錯誤な経営手法に取り組んでも、満足できる結果は期待できません。
これまでの伝統的な手法を大切にしながらも、時代が求めるニーズや方向性に対して敏感に反応しながらフレキシブルにカスタマイズすることも人的資本経営を成功に導く秘訣です。