法人化するには

法人化申請する書類

個人事業主と法人のメリット・デメリット

個人事業主は開業手続きがシンプルで、開業届と青色申告承認申請だけでスタートできる点が魅力です。税制面では、売上が少ないうちは所得控除や青色申告特別控除を活かせます。一方、法人化すると利益が年間800万円以上になると法人税率(23.2%※中小法人の場合)が個人所得税の上限税率(55%)よりも低くなるため、節税効果が大きくなります。また、代表者自身への役員報酬や退職金の支給を通じた所得分散、福利厚生費の計上も可能です。ただし、登記費用や会計処理、決算書作成といった事務負担が増えるほか、消費税の免税期間(設立2期目まで適用)終了後は消費税納付義務が生じる点も押さえておきましょう。

設立手続きのフローと必要書類

定款の作成・認証

紙定款:認証手数料30,000~50,000円+印紙税40,000円+謄本手数料約2,000円
電子定款:認証手数料30,000~50,000円+電磁的記録保存手数料300円+同一情報交付手数料700円
※定款には社名、目的、株式数、本店所在地、公告方法などを明記します。

資本金の払込み

発起人が銀行振込で払い込み、銀行の払込証明(通帳の写し等)を取得します。

法務局への登記申請

登録免許税は「資本金×0.7%」(最低150,000円)を納付。設立登記申請書、定款謄本、払込証明書、役員就任承諾書などを提出します。

各種届出

設立後1カ月以内に、税務署へ「法人設立届」「青色申告承認申請」「給与支払事務所等開設届」、都道府県・市区町村へ「法人事業概況書」などを提出します。

これら一連の流れは、司法書士や行政書士に一部を委託するとミスを防げるほか、時間短縮にもつながります。

費用負担と設立後の運営ポイント

主な設立費用は、定款認証と登録免許税で計約20~25万円。専門家報酬を含めると30~40万円程度見込んでおくと安心です。
設立後は、決算期ごとに法人税申告書や財務諸表の作成が必須になります。初年度は決算期を半年以内に設定できる「短期決算」を選ぶと、税負担を先延ばしできます。また、消費税免税期間を最大2期享受するため、設立日から決算までの期間も調整可能です。
さらに、融資を利用して店舗出店や設備投資を行う場合、法人格があることで日本政策金融公庫や民間銀行の創業融資が通りやすくなるメリットがあります。事業計画書に法人の利益計画や返済シミュレーションを盛り込み、資金調達の成功率を高めましょう。
最後に、定款の「事業目的」は将来事業拡大を見越して幅広く記載しておくと、後日の定款変更が不要または簡素化でき、コストと手間を抑えられます。法人化は経営基盤を強化し、次の成長ステージへの足掛かりになりますので、節税メリットと運営負担のバランスを検討し、最適な選択を行ってください。